本記事では,コーシー・シュワルツの不等式(コーシー=シュワルツの不等式,シュワルツの不等式)を証明したいと思います.
ここでは,ベクトルをa のように矢印をつけた文字で表し,ベクトルa の大きさを∣a∣ ,a とb の内積をa⋅bと表すこととします.
コーシー・シュワルツの不等式
コーシー・シュワルツの不等式には,いくつか同値の形がありますが,ここでは以下の不等式を証明します.
コーシー・シュワルツの不等式.
−∣a∣∣b∣≦a⋅b≦∣a∣∣b∣
証明.
ベクトルa とb の成す角をθ とすると,
cosθ=∣a∣∣b∣a⋅b より
−1−1−∣a∣∣b∣≦cosθ≦1≦∣a∣∣b∣a⋅b≦1≦a⋅b≦∣a∣∣b∣
大学数学でのお話ですが,三角比を定義していない内積空間においてもコーシー・シュワルツの不等式は成り立つため,この証明方法はモヤモヤします.それでも高校数学では,この証明方法が一番簡単だと思います.
不等式の変形
前節でコーシー・シュワルツの不等式を証明しました.
ここでは不等式を変形します.そのためにベクトルを成分表示してみましょう.
まずは,平面ベクトルとして考えてみます.
a=(a,b),b=(x,y)とすると,コーシー・シュワルツの不等式は,
−∣a∣∣b∣(a⋅b)2(a⋅b)2(a⋅b)2(ax+by)2≦a⋅b≦∣a∣∣b∣≦(∣a∣∣b∣)2≦∣a∣2∣b∣2≦(a⋅a)(b⋅b)≦(a2+b2)(x2+y2)
数学Ⅱで出てきたコーシー・シュワルツの不等式の形となりました.
同様に空間ベクトルとして考えると,a=(a,b,c),b=(x,y,z)として,
(a⋅b)2(a⋅b)2(ax+by+cz)2≦∣a∣2∣b∣2≦(a⋅a)(b⋅b)≦(a2+b2+c2)(x2+y2+z2)
となります.
こちらの形で暗記するよりも,ベクトルから導く方が自然な気がします.暗記しなくていいですし.
令和4年度から適用の学習指導要領では,ベクトルは「数学C」の内容になってしまいました.しかし,文系の人もベクトルの基礎に軽く触れておいた方が良いと思います.コーシー・シュワルツの不等式を自然に導けるというのもありますが,図形問題の見え方が変わってくるなど,メリットが多いためです.
「勝手気ままに高校数学」シリーズ一覧へ