本記事では,二項分布について解説します.
ベルヌーイ分布は学習指導要領外ではありますが,せっかくなので触れたいと思います.
ベルヌーイ分布
何か確率的な行いを一度して,ある事象 A が起これば 1,事象 A が起らなければ 0 となる確率変数 X について考えます.
少し抽象的なのでいくつか例を挙げます.
例
- コイントスを1回して,表が出れば 1,裏が出れば 0 をとる確率変数.
- サイコロを1つ投げて,3の倍数が出れば 1,3の倍数以外が出れば 0 をとる確率変数.
- 工場のとある生産ラインで作られた製品を無作為にひとつ取り出し,不良品ならば 1,不良品でなければ 0 をとる確率変数.
このような確率変数に関して,確率変数が 1 となる確率をP(X=1)=pとすると,P(X=0)=(1−p) となります.
このような確率分布をベルヌーイ分布といい,以下の式で表されます.
ベルヌーイ分布.
P(X=x)=px(1−p)1−x
上述の確率変数の例を用いて,ベルヌーイ分布の例を見てみましょう.
上記の例1の場合,ベルヌーイ分布は,
P(X=x)=(21)x(21)1−x=21
となります.
例2の場合,ベルヌーイ分布は,
P(X=x)=(31)x(32)1−x
となります.
ベルヌーイ分布の平均と分散
続いて,ベルヌーイ分布の平均と分散を求めてみましょう.
ベルヌーイ分布の平均 E(X) は,
E(X)=1×p+0×(1−p)=p
ベルヌーイ分布の分散 V(X) は,
V(X)=(1−p)2p+(0−p)2(1−p)=p3−2p2+p+p2−p3=−p2+p=p(1−p)
まとめると以下のようになります.
ベルヌーイ分布の平均と分散
E(X)=p
V(X)=p(1−p)
二項分布
次に,ベルヌーイ分布に従う試行を n 回行うことを考えます.そこで事象 A が起きる回数を確率変数 X とおきます.
これも少し抽象的なので,例をいくつか挙げてみましょう.
例
- コイントスを n 回行い,表が出る回数を確率変数 X とする.
- サイコロを n 回投げて,3の倍数が出る回数を確率変数 X とする.
- 工場のとある生産ラインで作られた製品を無作為に n 個取り出し,不良品の個数を確率変数 X とする.
1回の試行で事象 A が起きる確率を p とすると,この確率変数は以下の二項分布に従います.
二項分布.
P(X=x)=nCxpx(1−p)n−x
(x=0,1,2,⋯,n)
上記の例1の場合,二項分布は,
P(X=x)=nCx(21)x(21)n−x=nCx(21)n
となります.また例2の確率変数の場合,二項分布は,
P(X=x)=nCx(31)x(32)n−x
となります.
二項分布の平均と分散
最後に二項分布の平均と分散を求めてみましょう.
二項分布の平均 E(X) は,
E(X)=x=0∑nx⋅nCxpx(1−p)n−x=x=1∑n(x−1)!(n−x)!n!px(1−p)n−x=npx=1∑n(x−1)!(n−x)!(n−1)!px−1(1−p)n−x=npx=1∑n(x−1)!{(n−1)−(x−1)}!(n−1)!px−1(1−p)(n−1)−(x−1)=npy=0∑n−1n−1Cypy(1−p)n−1−y=np
演習.
先述のベルヌーイ分布を利用すると,もっと簡単に二項分布の平均を求めることができます.試してみましょう.
ベルヌーイ分布の分散 V(X) を求めるために,E(X2) を求めます.
E(X2)=n(n−1)p2+np
かなり省略しました.
ベルヌーイ分布の分散 V(X) は,
V(X)=E(X2)−{E(X)}2=n(n−1)p2+np−(np)2=np(1−p)
分散と平均に関する等式を使っています.詳しくは,以下の記事をご参照ください.
演習.
E(X2) を求めましょう.
演習.
平均の場合と同様に,ベルヌーイ分布を用いると,簡単に二項分布の分散を求められます.試してみましょう.
二項分布の平均と分散をまとめて終わりにしたいと思います.
二項分布の平均と分散.
E(X)=np
V(X)=np(1−p)
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