命題に関する基本的な用語を解説!
本記事では,高校数学に登場する「命題」に関した用語を解説したいと思います.
少し理解しにくい用語や,覚えにくい用語もあるかもしれませんが,論理の基礎となるので,しっかりマスターしましょう!
命題
正しいかどうかを明確に決められる文章や式のことを命題といいます.
また命題が正しいことを命題が真であるといい,命題が正しくないことを偽といいます.
例をいくつか挙げます.
(例1)
「今日は曇っていて過ごしやすい」
個人の感想なので命題ではありません.
(例2)
「100000は大きな数である」
100000を大きいと感じるか,小さいと感じるかは個人の主観によるものであり,数学的に明確に真偽を定めることができません.よってこの文章も命題ではありません.
(例3)
「 1 = 5 である」
これは命題であり,偽となります.
(例4)
「実数 a,b に関して,(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2 が成り立つ」
これは命題であり,真になります.
定理,系,公式
真である命題のうち,数学的に重要なものを定理と呼びます.三平方の定理(ピタゴラスの定理)などで「定理」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません.
真である命題のうち,定義や他の定理から容易に証明できるものを系といいます.高校数学では出てこない言葉なので,なんとなく知っておくだけで十分です.
また定理のうち,数式の形で表されるもののことを公式と呼ぶことがあります.展開公式や因数分解の公式など,「公式」は頻繁に耳にする言葉でしょう.
仮定と結論
まず条件について説明します.
条件とは,変数を含む式や文章のうち,変数の値によって真偽が決まるもののことをいいます.
例えば「 x > 10」は, x = 3 のとき「 3 > 10」となり偽ですが, x = 12 のときは「 12 > 10」となり真となります.
他にも条件の例として以下のようなものがあります.
「 x < 0 または y < 0」
「 x を3で割った余りは 1 である」
「 x = y 」
「 x は偶数である」
「 x > y 」
ここで p,q を条件とします.このとき,命題「p ならば q」に関して,p を仮定,q を結論といいます.
また命題「p ならば q」を「p \Rightarrow q」と書きます.
例えば「x が偶数であるならば,x は 2 で割り切れる」という命題では,「x が偶数である」が仮定,「x は 2 で割り切れる」が結論となります.
ちなみにこの命題は真です1というかこれは定義なので,命題の例として良くなかったかもしれません..
必要十分条件
命題 p \Rightarrow q (p ならば q)が成り立つとき,q は p であるための必要条件,p は q であるための十分条件といいます.
必要条件,十分条件という言葉は,直感的に捉えることが難しい言葉なので,丸暗記してしまうのも一つの手です.丸暗記をして,自然と慣れてくるまで練習するのも良いでしょう.
さらに p \Rightarrow q と q \Rightarrow p の両方が成り立つとき,p は q の必要十分条件である(q は p の必要十分条件である)といいます.
それでは例題を解きながら,必要条件,十分条件について理解を深めていきましょう.
例題.
条件 p と q が以下のとき,
p は q であるための「必要条件であるが十分条件ではない」か,「十分条件であるが必要条件ではない」か,「必要十分条件である」か,「必要条件でも十分条件でもない」かを答えよ.
(1)
p : x が偶数である.
q : x を 2 で割ったあまりが 1 である.
(2)
p : x = y
q : x^2 = y^2
(3)
p : x + y = 0 かつ xy = 0
q : x = 0,y = 0
(4)
p : a^2 = 9
q : a = 3
(5)
p : x が x^2 +3x + 2 = 0 を満たす.
q : x < 0
例題の解答と解説.
(1)
解答:必要条件でも十分条件でもない
p \Rightarrow q と q \Rightarrow p について考えてみましょう.
命題「 x が偶数であるならば,x を 2 で割ったあまりが 1 である」は偽です.よって p は q であるための十分条件ではありません.
また命題「x を 2 で割ったあまりが 1 ならば,x が偶数である」も偽であるため, p は q であるための必要条件ではありません.
(2)
解答:十分条件であるが必要条件ではない
命題「x = y ならば,x^2 = y^2」は真なので,p は q であるための十分条件です.
命題「x^2 = y^2 ならば,x = y」は偽です.反例として x = -1,y = 1 を挙げておきます.よって,p は q であるための必要条件ではありません.
(3)
解答:必要十分条件である
命題「x + y = 0 かつ xy = 0 ならば,x = 0,y = 0」は真なので,p は q であるための十分条件です.
命題「x = 0,y = 0 ならば,x + y = 0 かつ xy = 0」は真なので,p は q であるための必要条件です.
(4)
解答:必要条件であるが十分条件ではない
命題「a^2 = 9ならば, a = 3 」は偽でなので,p は q であるための十分条件ではありません.
命題「 a = 3 ならば,a^2 = 9」は真でなので,p は q であるための必要条件です.
(5)
解答:十分条件であるが必要条件ではない
命題「x が x^2 +3x + 2 = 0 を満たすならば,x < 0」は真です.方程式を解くと,x^2 +3x + 2 = 0 を満たす x が -1 と -2 であることがわかります.これはどちらも x < 0 を満たします.したがって,p は q であるための十分条件です.
命題「x < 0 ならば,x が x^2 +3x + 2 = 0 を満たす」は偽です.反例としては -3 などがあります.よって,p は q であるための必要条件ではありません.
条件の否定
条件 p の否定を \overline{p} と書きます.
条件の否定の例をいくつか挙げます.
「x > 0」の否定は「x \leqq 0」
「x は奇数」の否定は「x は偶数」
「x = 0 かつ y = 0」の否定は「x \neq 0 または y \neq 0」
「かつ」や「または」と組み合わせた場合については,こちらの記事をご参照ください.
なお,以下の記事では否定の記号に \neg を使っています.
命題の逆,裏,対偶
命題 p \Rightarrow q に対して,命題q \Rightarrow p のことを逆といいます.同様に,命題 \overline{p} \Rightarrow \overline{q} のことを裏,命題 \overline{q} \Rightarrow \overline{p} のことを対偶といいます.
命題の真偽と対偶の真偽は一致します.命題によっては対偶の方が証明しやすい場合もあります.
背理法による命題の証明
命題が成り立たないと仮定したときに矛盾が生じることを利用して,命題を証明する方法のことを背理法と言います.
背理法で証明できる命題として有名なものに「\sqrt{n} (n は平方数でない)は無理数である」があります.
詳しくは,以下の記事をご参照ください.