数列の極限とその性質

本記事では,数列の極限について解説します.

高校数学までの知識では,「極限」や「収束」を厳密に定義することはできませんが,どうにか「お気持ち」を理解していきましょう.

数列の収束と発散

数列 a_n について,n を限りなく大きくしていくと, a_n が限りなく定数 \alpha に近づいていく」ことを「数列\{ a_n \} \alpha 収束する」「数列\{ a_n \}極限値 \alpha を持つ」などと表現し,以下のような式で表されます.

\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \end{aligned}

例えば,数列 \begin{aligned} a_n = \frac{1}{n} \end{aligned} の極限は,

\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0 \end{aligned} 

となります.
n が大きくなると,数列の値が小さくなっていき,0に近づいていきます.

普段の記事ならばこれを証明するのですが,本記事では証明を行いません.
高校までの知識で厳密な証明はできませんので,このようなものだと思ってください.

ちなみに極限を持たない場合,つまり数列が収束しない場合,その数列は発散するといいます.
発散の仕方には4通りあります.

  1. 正の無限大に発散する.つまり n を限りなく大きくしていくと,数列の値も限りなく大きくなっていく.
    (例) \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} 2n = \infty \end{aligned}
     
  2. 負の無限大に発散する.つまり n を限りなく大きくしていくと,数列の値が限りなく小さくなっていく.
    (例) \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} -2n = - \infty \end{aligned}
     
  3. \pm k を交互に繰り返す.これを振動するという.
    (例) \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} (-1)^n \end{aligned}
     
  4. 振動しながら発散する.符号が交互に変わりながら値の絶対値が増加する.無限大に発散もしないし,負の無限大にも発散しない.
    (例) \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} (-3)^n \end{aligned}
     

数列の極限の性質

数列の極限の性質を紹介します.前節に引き続き,証明はしません.

定理.(極限の性質)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \end{aligned} \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} b_n = \beta \end{aligned} のとき,次の等式が成り立つ.
(1)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} (k a_n + l b_n) = k \alpha + l \beta \end{aligned}

(2)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n b_n = \alpha \beta \end{aligned}

(3)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = \frac{\alpha}{\beta} \end{aligned}

    

定理.(はさみうちの原理)
(1)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \end{aligned} \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} b_n = \beta \end{aligned} のとき,全ての n について a_n \leqq b_n が成り立つならば, \alpha \leqq \beta が成り立つ.

(2)
\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} b_n = \alpha \end{aligned} のとき,数列 x_n について,全ての自然数 n a_n \leqq x_n \leqq b_n が成り立つならば,数列 x_n\alpha に収束する.

はさみうちの原理の使用例

はさみうちの原理を利用して,\begin{aligned} a_n = \frac{\sin{n}}{n} \end{aligned} の極限を求めます.

-1 \leqq \sin{n} \leqq 1 \\
 \\
- \frac{1}{n} \leqq \frac{\sin{n}}{n} \leqq \frac{1}{n} \\
 \\
 \lim_{n \to \infty} - \frac{1}{n} \leqq  \lim_{n \to \infty}  \frac{\sin{n}}{n} \leqq   \lim_{n \to \infty}  \frac{1}{n} \\
 \\
 0 \leqq  \lim_{n \to \infty}  \frac{\sin{n}}{n} \leqq 0 \\
 \\ \\
 \lim_{n \to \infty}  \frac{\sin{n}}{n} = 0

なぜ厳密に定義することが難しいのか

極限を正確に定義するためには「変化の状態」を論理的に記述する必要があります.
この「変化の状態」というのものが曲者で,19世紀にようやく論理的に表せるようになりました.

さて,この「変化の状態」をいったいどのように評価するのかといいますと,不等式による評価を利用します.

例えば,数列 a_n が実数 \alpha に収束することは以下のように定義します.

数列の収束の定義.
どんな小さな正の数 \epsilon > 0 に対しても,ある自然数 n_0 が存在して,n_0 \leqq n を満たす全ての自然数 n に対して,|\alpha - a_n| < \epsilon となることを収束するといい, \alpha を数列 a_n 極限という.

 

さて,少しだけ大学の数学を覗き見しましたが,詳しくは大学に入ってから学ぶことにしましょう.

    

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