相加平均,相乗平均

本記事では,相加平均と相乗平均について解説します.

相加平均,相乗平均の定義

相加平均はこれまで平均と呼んできたものです.いきなりですが,一般形の定義から入ります.

相加平均(算術平均)の定義.
n個の数x_1, x_2, \cdots , x_nの相加平均は以下の式で定義される.
\begin{aligned} \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i = \frac{1}{n} ( x_1 + x_2 + \cdots + x_n ) \end{aligned}

それに対して相乗平均は全ての数値を掛け合わせたもののn乗根です.

総乗平均(幾何平均)の定義.
n個の数x_1, x_2, \cdots , x_nの相乗平均は以下の式で定義される.
\begin{aligned} \sqrt[n]{\prod_{i=1}^{n} x_i} = \sqrt[n]{( x_1 \cdot x_2 \cdot \cdots \cdot x_n )} \end{aligned}

n乗根に関しては後の単元で解説しますが,簡単に説明すると,\sqrt[n]{x}n乗するとxになる数のことです.

また,総和\Sigma,総乗\Piの記号の解説は以下の記事にあります.

相加平均と相乗平均の不等式

総和平均と相乗平均の間には以下の不等式が成り立ちます.

命題.
a \geqq 0b \geqq 0のとき以下の不等式が成り立つ,
\begin{aligned} \frac{a + b}{2} \geqq \sqrt{ab} \end{aligned}
等号が成り立つのはa = bのときである.

証明.
\frac{a + b}{2} \geqq \sqrt{ab}は両辺が0以上であり,不等式の両辺が0以上のときa \geqq b \Leftrightarrow a^2 \geqq b^2が成り立つので,
\begin{aligned} (左辺の2乗) - (右辺の2乗) &= \left(\frac{a + b}{2}\right)^2 - \left(\sqrt{ab}\right)^2 \\ &= \frac{a^2 +2ab + b^2}{4} - ab \\ &= \frac{a^2 -2ab + b^2}{4} \\ &= \frac{(a-b)^2}{4} \geqq 0 \end{aligned}
\frac{(a-b)^2}{4} = 0となるのは,a = bのときである.

ちなみに,証明はつけませんが,一般の相加平均,相乗平均についても同様の不等式が成り立ちます.

命題.
x_i \geqq 0 (i = 1,2, \cdots , n)のとき以下の不等式が成り立つ,
\begin{aligned} \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \geqq \sqrt[n]{\prod_{i=1}^{n} x_i} \end{aligned}
等号が成り立つのはx_1 = x_2 = \cdots = x_n のときに限る.

演習問題

さて最後に,相加平均と相乗平均の不等式を利用できる演習問題を用意しました.

この演習問題では,x \geqq 0y \geqq 0とする.
以下の3つの不等式が成り立つことを証明せよ.また等号成立条件を述べよ.

(1)
\begin{aligned} x + \frac{16}{x} \geqq 8 \end{aligned}

(2)
\begin{aligned} \left(x + \frac{1}{x}\right) \left(y + \frac{1}{y}\right) \geqq 4 \end{aligned}

(3)
\begin{aligned} \left(x + \frac{4}{y}\right) \left(y + \frac{16}{x}\right) \geqq 36 \end{aligned}

演習問題の解答例

(1)
相加平均と相乗平均の不等式より,
\begin{aligned} x + \frac{16}{x} &\geqq 2 \sqrt{x \cdot \frac{16}{x}} \\ x + \frac{16}{x} &\geqq 8 \end{aligned}
等号が成り立つのはx = \frac{16}{x},すなわちx = 4のとき.

(1)の別解
相加平均と相乗平均の不等式を使わずとも証明できます.
\begin{aligned} (左辺) - (右辺) &= x + \frac{16}{x} - 8\\ &= \frac{x^2 -8x + 16}{x} \\ &= \frac{(x - 4)^2}{x} \geqq 0 \end{aligned}
等号が成り立つのはx = 4のとき.

(2)
相加平均と相乗平均の不等式より,
\begin{aligned} x + \frac{1}{x} &\geqq 2 \sqrt{x \cdot \frac{1}{x}} \\ x + \frac{1}{x} &\geqq 2 \end{aligned}
同様に,
\begin{aligned} y + \frac{1}{y} &\geqq 2 \sqrt{y \cdot \frac{1}{y}} \\ y + \frac{1}{y} &\geqq 2 \end{aligned}
x + \frac{1}{x} \geqq 2y + \frac{1}{y} \geqq 2の両辺を掛け合わせて,
\begin{aligned} \left(x + \frac{1}{x}\right) \left(y + \frac{1}{y}\right) \geqq 4 \end{aligned}
等号が成り立つのはx = \frac{1}{x}かつy = \frac{1}{y}のとき,すなわちx = 1かつy = 1のとき.

(3)
相加平均と相乗平均の不等式より,
\begin{aligned} (左辺) &= \left(x + \frac{4}{y}\right) \left(y + \frac{16}{x}\right) \\ &= xy + 20 + \frac{64}{xy} \end{aligned}
ここで,
\begin{aligned} xy + \frac{64}{xy} &\geqq 2 \sqrt{xy \cdot \frac{64}{xy}} \\ &= 2 \sqrt{64} \\ &= 16 \end{aligned}
よって
\begin{aligned} \left(x + \frac{4}{y}\right) \left(y + \frac{16}{x}\right) &= xy + 20 + \frac{64}{xy} \\ &\geqq 16 + 20 \\ &\geqq 36 \end{aligned}
等号が成り立つのはxy = \frac{64}{xy},すなわちxy = 8のとき.

 

「勝手気ままに高校数学」シリーズ一覧へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


数学

次の記事

不等式の性質