本記事の目標:
単項式,多項式,整式の基本事項を理解する.
単項式,多項式,整式の違いを説明できるようにし,次数や係数を求めような基本操作を習得する.

 数学では数を文字でおくことがあります.

 未知の数があったときに,その未知数を文字でおくことで,方程式をたてることができます.例えば「570gの水にいくらか食塩を溶かすと5%の食塩水ができました.溶かした食塩は何gでしょう」といった問題があれば,溶かした食塩を x g とおくことで,(570 + x) \times 0.05 = x と方程式をたてることができます.

 また,一般的にどのような数でも1「実数の場合」「正の整数の場合」などの条件がつくことも多いですが,ここでは分かりやすさのために「どのような数でも」と表現しています.成り立つ性質について,適当な文字によってその性質を表すことができます.例えば,分配法則は a(b + c) = ab + ac(a + b)c = ac + bc と表されます.ここで出てくる a , b , c にどのような数を入れても,等式は成り立ちます.

 さらに「一方の数が変化すると,もう一方の数も変化する」といった関係についても,文字を用いて表すことができます.比例や反比例の関係や,1次関数などでは,x の変化に合わせて y がどのように変化するかを関数の形で表します.それぞれ y = axy = \frac{a}{x}y = ax + b といった形で表します.

 数を文字で表すことは,皆さんにとって当たり前のことになっているでしょう.

 ここでは,文字の入った式をより活用するために,便利な道具(概念)を導入していきます.

単項式

 4x-3a^2bc^3 のように,数と文字の掛け算だけで表される式のことを単項式といいます

4x = 4 \times x

-3a^2bc^3 = -3 \times a \times a \times b \times c \times c \times c

このように数と文字の掛け算だけで書けることから 4x-3a^2bc^3 が単項式であると分かります.

 では 4x + y は単項式でしょうか.答えは「単項式ではない」です.繰り返しになりますが,数と文字の掛け算だけで表される式のことを単項式といいます.よって,+ があることから 4x + y は単項式ではありません.
 ちなみに,数だけの式や文字だけの式も単項式に含まれます.例を挙げると,1x なども単項式です.

例題1.
次のうち単項式を全て選びなさい.
(a) -x^3z
(b) -4s^5t^2
(c) 2a^3b^2c^3de
(d) 3
(e) \frac{5 a c^2}{b}

例題1の解答と解説.

解答と解説を読む

例題1の解答.
答えは(a), (b), (c), (d) です.

例題1の解説.
(a) -x^3z = -1 \times x \times x \times x \times z  単項式です.
(b) -4s^5t^2 = -4 \times s \times s \times s \times s \times s \times t \times t 単項式です.
(c) 2a^3b^2c^3de = 2 \times a \times a \times a \times b \times b \times c \times c \times c \times d \times e  単項式です.
(d) 3 数だけの式も単項式になります.
(e) \frac{5 a c^2}{b} = 5 \times a \times \frac{1}{b} \times c \times c
一見すると数と文字だけの掛け算にも見えますが,文字の割り算(分数の分母に文字)が含まれているため単項式ではありません.分母に数だけがある場合は単項式ですが2例えば \frac{5 a b c^2}{3} のように,分母に文字があれば単項式ではありません.
※参考書で「 \times \frac{1}{b} は文字の掛け算だから単項式である」といった内容を読んだことがある人は,次のコラム(単項式の定義について困ったこと)を必ず読んでください.授業で同様の内容を教わった人も次のコラムを必ず読んでください.

     

コラム:単項式の定義について困ったこと

「コラム」を読む.

 例題1の(e)の式 \frac{5 a c^2}{b} = 5 \times a \times \frac{1}{b} \times c \times c は単項式ではありません.

 しかし分母に文字がある式について\times \frac{1}{b} は文字の掛け算なので単項式である」と主張する参考書を数冊発見しました.その中には,大手予備校から出版された参考書もあります.
 このように主張すること単体では,まだ問題にはなりません3正直かなりアウトですが,単項式という言葉は中学・高校の数学以外ではあまり見ないため,自由に定義してもいいと考えています.ただし,次数や多項式の定義をキチンとするならばのオハナシですが..このように主張する参考書が抱える問題は次の2点です.
 一つ目の問題は,単項式の次数(このコラムの後に出てきます)を考える問題で,分母の文字の扱いについてスルーしている点です.スルーするくらいなら,最初から不思議な定義をやめろと言いたい.
 二つ目の問題は,分母に文字がある式を単項式と定義しておきながら,多項式の定義を「単項式の和である」と言っている点です.これが大問題です.そのように定義された多項式は,通常の多項式ではありません.多項式を拡張したものの一つであるローラン多項式になります.全く別のものを作り出しています.

 残念ながら,「分母に文字があっても単項式」と主張する参考書では,「多項式は単項式の和である」もしくは,それに類似する定義がなされていました.多項式を正しく定義できていません.4「なぜ単項式の次数を求める問題で分母に文字のある式が出てこないのか」「なぜ多項式の問題では分母に文字が出てこないのか」といった疑問に至れば,自然と辿り着く問題点です(中高生ならば勘違いしてもおかしくありませんが).間違いは誰にでもあることですが,これは間違いの質が低すぎると言いたい.数学において大切な「考える」という行為をしていません.こんなものが大手予備校から出版されているとは,嘆かわしいばかりです.よって,これらの参考書に書かれた内容は誤りです.

 詳しい説明は省きますが5ひとつ前の注釈を読むと片鱗は分かると思います.「分母に文字のある式も単項式である」と主張する参考書は,ほぼ確実に危険物です.少し過激な表現になりますが,その参考書は資源ゴミか燃えるゴミで捨てましょう.

 ちなみに,コラムのタイトルに「困ったこと」と書いていますが,私は困っていません.困った内容の参考書があるだけです.

   


 

 次に単項式の係数と次数について解説します.

 単項式において掛けられている数の部分のことを係数といいます.
 例えば 4x4x = 4 \times x であり,掛けられている数が 4 なので,係数は 4 となります.
 -3a^2bc^3 であれば係数は -3 です.

 単項式において掛けられている文字の個数のことを,単項式の次数といいます.
 例えば 4x = 4 \times x は 文字が x 1個だけなので次数 1 となります.
 -3a^2bc^3 = -3 \times a \times a \times b \times c \times c \times c であれば,掛けられている文字の個数は a が2個,b が1個,c が3個の合わせて6個なので,次数は 6 です.

例題2.
次の単項式の係数と次数を答えよ.
(a) -x^3z
(b) -4s^5t^2
(c) 2a^3b^2c^3de
(d) 3
(e) a

例題2の解答と解説.

解答と解説を読む

例題2の解答.
(a) -x^3z
係数:-1  次数:4

(b) -4s^5t^2
係数:-4  次数:7

(c) 2a^3b^2c^3de
係数:2  次数:10

(d) 3
係数:3  次数:0

(e) a
係数:1  次数:1


例題2の解説.
(a) -x^3z = -1 \times x \times x \times x \times z
掛けられている数は -1 ,文字の個数は4個なので次数は 4 です.

(b) -4s^5t^2 = -4 \times s \times s \times s \times s \times s \times t \times t
掛けられている数は -4 ,文字の個数は7個なので次数は 7 です.

(c) 2a^3b^2c^3de = 2 \times a \times a \times a \times b \times b \times c \times c \times c \times d \times e
掛けられている数は 2 ,文字の個数は10個なので次数は 10 です.

(d) 3
掛けられている数は 3 ,文字の個数は0個なので次数は 0 です.

(e) a = 1 \times a
掛けられている数は 1 ,文字の個数は1個なので次数は 1 です.
数が掛けられていないように見えますが,このような場合は 1 が係数となります.

  


  

 文字の入った式では,特定の文字に着目し,それ以外の文字を数として扱うことがあります

 ひとつ例を挙げます.
-3a^2bc^3 の係数は -3 ,次数は6 です.
ここで a という文字に着目してみましょう.この場合,a だけを文字として認識し,それ以外の文字は数であると考えます.すると係数や次数はどうなるでしょうか.

-3a^2bc^3 = -3 \times b \times c \times c \times c \times a \times a

a 以外の文字は数とみなすので,係数は -3bc^3 となり,次数は a が2個なので,2 となります.

 2つ以上の文字に着目する場合もあります.-3a^2bc^3 に関して ac に着目してみると,係数は -3b ,次数は 5 となります.

例題3.
次の単項式について[ ]の中の文字に着目したときの係数と次数を答えよ.
(a) -x^3z  [ x ]
(b) -4s^5t^2  [ t ]
(c) 2a^3b^2c^3de  [bc]

例題3の解答と解説.

解答と解説を読む

例題3の解答と解説.
[ ]の中の文字に着目します.

(a) -x^3z  [ x ]
係数:-z  次数:3
z は数として扱います.

(b) -4s^5t^2  [ t ]
係数:-4s^5  次数:2
t は数として扱います.

(c) 2a^3b^2c^3de  [bc]
係数:2a^3de  次数:5
ade は数として扱います.

  


  

 複数の単項式の積は単項式になります.2つの単項式の積の場合,少しだけ式の形を交えて表すと,以下のようになります.

(単項式) \times (単項式) = (単項式)

 例を2つ挙げます.

4x \times (-3a^2bc^3) = -12a^2bc^3x
-2a^2b \times 3ab^4 = -6a^3b^5

丁寧に書くと

4x \times (-3a^2bc^3) = 4 \times (-3) \times a^2bc^3x = -12a^2bc^3x
-2a^2b \times 3ab^4 = -2 \times 3 \times a^{2+1} \times b^{2+4} = -6a^3b^5

同じ文字を掛けるときは,a^m \times a^n = a^{m + n} となることに留意しましょう.

  

探求:単項式の積の次数

「探求」を読む

 単項式の積の次数がどうなるか観察してみましょう.次の計算を見てみます.

4x \times (-3a^2bc^3) = -12a^2bc^3x

4x の次数は 1-3a^2bc^3 の次数は 6-12a^2bc^3x の次数は 7 となります.つまり

(次数1の単項式) \times (次数6の単項式) = (次数7の単項式)

となっています.他の次数1の単項式と次数6の単項式の積についても成り立つか見てみましょう.

a \times 2a^6 = 2a^7

-2a \times 4a^3b^3 = -8a^4b^3

どうやら以下の式
(次数1の単項式) \times (次数6の単項式) = (次数7の単項式)
は次数の条件を満たすどのような単項式についても成り立ちそうです.

 これをさらに一般化してみます.

(次数mの単項式) \times (次数nの単項式) = (次数 m+n の単項式)

この法則が成り立つか,確認してみてください.また,なぜこのような法則が成り立つのか考えてみましょう.


   

    

例題4.
次の計算をせよ.
(1) -2ab \times 4a^2b^2
(2) 3x^2y \times 5x^3y^2z^2
(3) ab^2 \times (-2ac) \times 3a^4b^2

例題4の解答.

解答を読む

例題4の解答.

(1) -2ab \times 4a^2b^2 = -8a^3b^3

(2) 3x^2y \times 5x^3y^2z^2 = 15x^5y^3z^2

(3) ab^2 \times (-2ac) \times 3a^4b^2 = -6a^6b^4c

  


  

探求:0の次数は?

「探求」を読む

 単項式 0 の次数は何でしょうか.

 数だけなので次数は 0 であると考えるかもしれません.しかし実際には 0 の次数は「定義されていない」のです.

 ここでは,なぜ 0 の次数は定義されていないのか,考えてみましょう.

ひとつ前の探求の項目で単項式の積の次数について考えました.そこで以下のような法則について考えました.

(次数mの単項式) \times (次数nの単項式) = (次数 m+n の単項式)

単項式の積では上記の法則が成り立ちます.ただし 0 の次数を 0 と仮定すると,この法則が当てはまらなくなります.片方の単項式が 0 だった場合,つまり (次数mの単項式) \times 0 のとき何が起こるか見てみましょう.この場合,

(次数mの単項式) \times 0 = 0

となります.ここで 0 の次数を 0 だと仮定します.すると,

(次数mの単項式) \times (次数 0 の単項式) = (次数 0 の単項式)

となってしまい,(次数mの単項式) \times (次数nの単項式) = (次数 m+n の単項式)の法則が成り立たなくなってしまいます.(次数mの単項式) \times (次数 0 の単項式) = (次数 m の単項式) となってほしいのですが,そうならないのです.このことから,0 の次数を 0 と考えることには違和感が生じます.かといって,0 の次数を 0 以外の数にすることにも違和感があります6大学の数学では,ある操作のために 0 の次数を適当な負の数にしたり,負の無限大と定義することがあります.

 このような理屈で,0 の次数は「定義されていない」と考えることができそうです.この考え方が正しいかは,正直分かりません.ひとつの考え方としてこのようなものもある,というだけです.

 

 実は今回の単項式の積に限らず,0 の掛け算は様々な例外を抱えています.実数の掛け算においては 0 以外の数では逆数を考えることができます.実数 a の逆数とは,a に掛けると 1 となる数 \frac{1}{a} のことです.例えば,4 の逆数は \frac{1}{4} です.しかし 0 に逆数は存在しません.0 に何を掛けても 1 にはならず,必ず 0 となるためです.

 

 話を元に戻しましょう.0 は掛け算において特別なのです.そのため, 0 の次数も定義されないのかもしれませんね.

    

多項式

 単項式を + で繋いだ式のことを多項式といいます.例えば以下のような式が多項式です.

x^3 + 3x^2 - 2xy + 3x -5y + 11

「おい待てい!マイナス(-)でつながっているぞ!」と言いたくなるかもしれませんが,この式は以下のように書き換えることができます.

x^3 + 3x^2 + (- 2xy) + 3x + (-5y) + 11

単項式が和の形で繋がっていますね.何だか複雑に感じる人は「単項式を + - で繋いだ式のことを多項式という」と理解しても良いでしょう.
 さて,多項式において + で繋がれた単項式ひとつひとつのことをと呼びます.上例の多項式の場合, x^33x^2 - 2xy3x-5y11 の6つの項があります.また,11 の項のように,文字を含まない項のことを定数項といいます.

例題5.
次の式の中から多項式を全て選びなさい.また,選んだ多項式に定数項がある場合は,定数項も答えなさい.
(a) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y
(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12
(c) x^3 - 6x^2 + 12x - 8
(d) 3
(e) a^2c + 3abc^4 -2ab^2 + \frac{c^2}{b} -123a + 234

例題5の解答と解説.

解答と解説を読む

例題5の解答.
多項式は(a), (b), (c)です.
また(b)の定数項は 12 ,(c)の定数項は -8 です.

(d) 3 は数だけの式なので単項式です.
(e) \frac{c^2}{b} が単項式ではありません.単項式でないものが足されているため多項式ではありません.

  


  

 続いて多項式に次数を導入します.多項式を構成する項の次数のうち,最も次数の高い項の次数が,その多項式の次数となります.上例の多項式を再掲します.

x^3 + 3x^2 - 2xy + 3x -5y + 11

この多項式の次数を調べてみましょう.この多項式には x^33x^2 - 2xy3x-5y11 の6つの項があります.それぞれの項の次数は, x^3 の次数が 33x^2 の次数が 2 - 2xy の次数が 23x の次数が 1-5y の次数が 111 の次数が 0 となります.最も次数が大きい項は x^3 であり,その次数は 3 であるため,この多項式の次数は 3 となります.

 また,次数が n の式のことを,n次式や n次の式といいます

例題6.
次の多項式の次数を答えよ.
(a) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y
(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12
(c) x^3 - 6x^2 + 12x - 8
(d) 3a^4b^2 + a^4b - 8a^3b^2 + 2a^3 -9a^2 +ab -19a + 23

例題6の解答と解説.

解答と解説を読む

例題6の解答.
(a) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y
次数:3

(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12
次数:5

(c) x^3 - 6x^2 + 12x - 8
次数:3

(d) 3a^4b^2 + a^4b - 8a^3b^2 + 2a^3 -9a^2 +ab -19a + 23
次数:6

例題6の解説.
(a) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y
最も次数の高い項は -x^2z で,その次数は 3 です.

(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12
最も次数の高い項は s^3t^2 で,その次数は 5 です.

(c) x^3 - 6x^2 + 12x - 8
最も次数の高い項は x^3 で,その次数は 3 です.

(d) 3a^4b^2 + a^4b - 8a^3b^2 + 2a^3 -9a^2 +ab -19a + 23
最も次数の高い項は 3a^4b^2 で,その次数は 6 です.

  


  

 単項式のときと同様に特定の文字に着目し,着目しなかった文字を数として扱うことがあります.上例の多項式を再度見てみましょう.

x^3 + 3x^2 - 2xy + 3x -5y + 11

この多項式を x に着目して,次数と定数項を求めてみます.着目しない文字である y を数とみなすことに気をつけましょう.次数は 3 となり,定数項は -5y + 11 となります.数の部分は +- の記号も含めて,丸ごと定数項となります. 着目する文字の入っていない項は全て定数項であると考えても良いでしょう.

例題7.
次の多項式について[ ]の中の文字に着目したときの次数と定数項を答えよ.
(a) 3a^4b^2 + a^4b - 8a^3b^2 + 2a^3 -9a^2 +ab -19a + 23  [ a ]
(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12   [ t ]
(c) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y  [ xz ]

例題7の解答と解説.

解答と解説を読む

例題7の解答と解説.
[ ]の中の文字に着目します.

(a) 3a^4b^2 + a^4b - 8a^3b^2 + 2a^3 -9a^2 +ab -19a + 23  [ a ]
次数:4  定数項:23
b は数として扱います.

(b) s^3t^2 - s^2t + 6s^2 - 12st + 12   [ t ]
次数:2  定数項:6s^2 + 12
s は数として扱います.最も次数が高い項は s^3t^2 になります.また t が含まれない項は全て定数項となります.

(c) -x^2z + 3z - 56x^2 -12y  [ xz ]
次数:3  定数項:-12y
y は数として扱います.最も次数が高い項は -x^2z になります.

  


  

 多項式において,ひとつの文字に着目して,次数の高い項から順に並び替えることを降べきの順に整理するといいます.逆にひとつの文字に着目して,次数の低い項から順に並び替えることを昇べきの順に整理するといいます.次数が同じ項の並びはどちらでも構いませんが,他の文字の次数の高い項から並べると見やすいことがあります.

 次の多項式を使って,降べきの順と昇べきの順の例を挙げます.

- 8 + x^3 -3xy +12x - 6x^2 + 12x^2y^2

この多項式を x に着目して降べきの順に整理すると以下のようになります.

x^3 + 12x^2y^2 - 6x^2 -3xy +12x - 8

x に着目して昇べきの順に整理すると以下のようになります.

- 8 +12x -3xy - 6x^2 + 12x^2y^2 + x^3

 

 文字が1種類だけの式は,基本的に降べきの順に並べておきましょう!

 

 

例題8.
次の多項式について[ ]の中の文字に着目して降べきの順に整理せよ.
(1) 2ab -3b + 4a^5 -12a^4 + 3a^2b^2 - 3a^3 + 23  [ a ]
(2) x^3y^2 - x^4y + 6x^6 - 12xy + 12x - x^2   [ x ]

例題8の解答と解説.

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例題8の解説.
[ ]の中の文字に着目して,次数の高い項から順に並び替えます.

例題8の解答.
(1)
4a^5 -12a^4 - 3a^3 + 3a^2b^2 +2ab -3b + 23
次数が等しい項は逆でも良い.つまり以下のような答えでも良い.
4a^5 -12a^4 - 3a^3 + 3a^2b^2 +2ab + 23 -3b

(2)
6x^6 - x^4y +x^3y^2 - x^2 - 12xy + 12x
次数が等しい項は逆でも良い.以下は別解.
6x^6 - x^4y +x^3y^2 - x^2 +12x - 12xy

   

   

コラム:多項式の隠れた条件とローラン多項式

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 単項式の解説で少しお話ししましたが,文字の割り算が含まれる場合,つまり分数の分母に文字がある場合は単項式ではありません.これは多項式にも当てはまります.単項式の和が多項式なので,文字の割り算が含まれる項がある式は多項式ではありません.

 この条件を別の表現で表してみます.
 文字が分数の分母にある場合でも,指数の形で表すことができます.
\frac{1}{a} = a^{-1} \\ \frac{1}{a^2} = a^{-2}
というふうに表します.一般化すると
\frac{1}{a^n} = a^{-n}
となります.
 また,文字の正の平方根 \sqrt{a} を含む式も,単項式や多項式ではありません.正の平方根を指数の形で,\sqrt{a} = a^{\frac{1}{2}} と表すことができます.

 ここまでの話をまとめて,多項式の条件を言い換えてみます.つまり,多項式に含まれる文字の冪指数7指数の右上に載っている数のこと.a^n における n の部分のこと.は正の整数でなければならない,という条件があると言えます.これは,文字の割り算や,文字の正の平方根を含まないという条件を,少しお堅く言い直した条件です.この条件は高校の教科書ではあまり書かれていないことです.

 ちなみにこの条件を緩くして,冪指数が負の整数の場合でもOKにした多項式をローラン多項式といいます.大学進学後に学ぶ人が居るかもしれません.私も詳しいわけではありませんが,なかなか面白そうです.

 数学の世界では「この条件を緩くしたらどうなるか」「この条件を無くすとどうなるか」「条件を足したらどうなるか」といったことを考えることで,新しく興味深い洞察に辿り着くことがあります.そのために,定義や定理に含まれる条件を明確にする必要があるのです.

    

整式

 単項式と多項式を合わせて整式といいます.

 文字の部分が同じ項のことを同類項といいます.基本的に同類項があればまとめます.次の式を見てみましょう.

2a^2b^2 + a^2b - 3a^2b^2 + 2a -7a +ab - 3ab + 23

文字の部分が a^2b^2 の項が2つ,a の項が2つ,ab の項が2つあります.これらの同類項をまとめると,

2a^2b^2 + a^2b - 3a^2b^2 + 2a -7a +ab - 3ab + 23 \\ = (2 - 3) a^2b^2 + a^2b + (2 - 7)a + (1 - 3) ab + 23 \\ = -a^2b^2 + a^2b - 5a - 2ab + 23

となります.

 

例題9.
次の式の同類項をまとめよ.
(1) 3x^3 - 2x^3 + 4x^2 + x^2 - 5x + 8x -12 + 3
(2) a^2b^2 + 3a^2b - 5a^2b^2 -6ab + a + 12 + 5ab -4

例題9の解答.

解答を読む

例題9の解答.
(1)
3x^3 - 2x^3 + 4x^2 + x^2 - 5x + 8x -12 + 3 \\ = (3 - 2)x^3 + (4 + 1)x^2 + (-5 + 8)x + (-12 + 3) \\ = x^3 +5x^2 + 3x -9

(2)

a^2b^2 + 3a^2b - 5a^2b^2 -6ab + a + 12 + 5ab -4 \\ = -4a^2b^2 + 3a^2b - ab + a + 8

   

例題10.
A = 3x^4 - x^3 + x^2 - 3x + 2y - 4
B = x^4 - 2x^3 - 2x^2 + 2x + 3  のとき
A + BA - B を求めよ.

例題10の解答.

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例題10の解答.

A + B \\ = 3x^4 - x^3 + x^2 - 3x + 2y - 4 + x^4 - 2x^3 - 2x^2 + 2x + 3 \\ = 4x^4 - 3x^3 - x^2 - x + 2y - 1


A - B \\ = 3x^4 - x^3 + x^2 - 3x + 2y - 4 - (x^4 - 2x^3 - 2x^2 + 2x + 3) \\ = 3x^4 - x^3 + x^2 - 3x + 2y - 4 - x^4 + 2x^3 + 2x^2 - 2x - 3 \\ = 2x^4 + x^3 + 3x^2 -5x + 2y - 7

   

コラム:大学では整式という言葉を使わない!?

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 大学の数学では,単項式が多項式に含まれることが多々あります.つまり,高校の数学における整式と同じ意味で,多項式という言葉が使われるということです.

 ただ「整式」という言葉も決して悪い言葉ではありません.整数と同じように加減乗除ができる式,という性質をよく表した言葉だと思います.整式同士の足し算,引き算はすでに例題10で学習しました.掛け算もこの後の「展開公式」のページで学習します.割り算については,もう少し先で学習することになりますが,整数のときと同様に商と余りを求めることができます.

   

まとめ

 ここでは単項式や多項式の基本的な内容について学習しました.簡単な内容も多いため,流し読みで済ませた方もいるかもしれません.念のため,以下に挙げるキーワードを何も見ずに説明できるか,確認してみましょう.

キーワード:
単項式,多項式,整式,単項式の次数,多項式の次数,同類項,定数項,降べきの順

 

 次回は,整式同士の掛け算,「展開」について解説します!

    

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