2次方程式における2つの重要概念,解の公式と判別式について解説します.
このふたつは関係がありそうで別のものなのです.
2次方程式の解の公式
2次方程式の解がx=2a−b±b2−4acとなることを証明します.
2次方程式の解の公式は,平方完成をすることで簡単に求めることができます.
証明.
ax2+bx+ca(x2+abx+4a2b2)−4ab2+ca(x2+2ab)2−4ab2−4ac(x+2ab)2x+2abx=0=0=0=4a2b2−4ac=±4a2b2−4ac=2a−b±b2−4ac
3次以上の解の公式
3次方程式,4次方程式にも解の公式はあります.長くなるのでここには書きませんが.
5次以上の方程式に関しては,解の公式が存在しない(代数的に解けない)ことが知られています.5次以上の方程式が代数的に解けないことは,1824年にアーベルによって証明されました.その11年前にルフィニが同様の証明を行なっていますが,一部欠陥があったため,アーベルによって証明されたとするのが一般的です.昔は,「アーベルの定理」と呼ばれていましたが,アーベルの業績が多すぎること,ルフィニの功績が見直されたことから,「アーベル-ルフィニの定理」と呼ばれることが多くなりました.今日では,ガロアによって導入された「群(ぐん,group)」を使った証明が一般的であるため,アーベルやルフィニの証明方法が表舞台に出てくることはほとんどありません.
また,アーベル-ルフィニの定理は,日本の数学者岡潔(おかきよし)が,数学を志した一因にもなっています.以下は,岡潔の随筆『春宵十話』からの抜粋です.
そうして、この定理の話が日がたつにつれて印象鮮明となり、「解けないことを、いったいどう証明するのだろう」と考えこんだ。
(中略)
これにまじって私も京大理学部の物理学科に入った。ところが入ってみると、物理は好きになれなかった。「実験が下手だから」と自分では答えていたが、実際はアーベルの定理の方が高尚な気がしたからだった。
岡潔『春宵十話』(2006) 光文社文庫 24頁〜「数学への踏み切り」より.
判別式
方程式が重解を持つかどうかを調べるための式を判別式といいます.判別式は基本的にはDかΔで表され,重解が存在するときD=0となります.2次から4次までの方程式においては,判別式が解の公式の中に現れるため,判別式は解の公式から導くものだと勘違いされがちですが,それは全くの誤解です.
判別式の定義については,Wikipediaを参照して下さい.
ここでは,2次方程式の判別式を正しく求めてみます.
2次方程式の判別式の導出.
2次方程式ax2+bx+c=0の2つの解をα,βとする.
2次方程式の判別式Dは,
D=a2(α−β)2
と表される.
αに2a−b+b2−4ac,βに2a−b−b2−4acを代入して,
D=a2(2a−b+b2−4ac−2a−b−b2−4ac)2=a2(2a2b2−4ac)2=b2−4ac
2次方程式の判別式と実数解の個数
2次方程式の判別式は,実数解の個数の判定に使えます.
D>0のとき,実数解の個数は2つ.
D=0のとき,実数解の個数は1つ.判別式の定義通り重解を持つ.
D<0のとき,実数解を持たない.
また,2次関数y=ax2+bx+cに関して,y=0とし,その方程式の判別式Dを調べることで,2次関数y=ax2+bx+cとx軸との交点の個数を調べることができます.
D>0のとき,交点の数は2つ.
D=0のとき,交点の数は1つ.頂点で接する.
D<0のとき,交点を持たない.
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