良問の解説から,指数,そして巨大数へ
2020年の横浜市立大学の入試問題が面白かったので紹介します.
以下の問いに答えなさい.
(1)
の値を求めなさい.
(2)
が無理数であることを証明しなさい.
(3)
の値が有理数となる無理数の組が存在することを証明しなさい.
出典:2020年 横浜市立大学 前期理系第2問
この問題の面白さは,(3)にあります.誘導に従ってを使う場合,が有理数か無理数かを判定することなく証明ができてしまうのです.
ちなみに,問題の解答例や解説については,PENCIL氏のWebページに大変分かりやすいものがありますので,こちらをご覧になってください1私のしょぼい解説など不要でしょう.
さて,話が少し変わってしまうのですが,皆さんは指数法則になぜ括弧が付いているかご存じでしょうか.ではなく,と書かれる理由,それは指数の計算順序が右上から左下に向かって順に計算するものだからです.ひとつ例を挙げますと,は,,あっ,もう計算したくありません.
お気づきかもしれませんが,括弧を付けずに指数に指数を重ねると,巨大な数になります.
そしてと続けていくと,計算前から紙面を占領する邪魔な存在と化します.そこでドナルド・クヌースが矢印を使った記法を考案しました.
ドナルド・クヌースといいますと,あのDonald Ervin Knuthです2読者置いてけぼりなトートロジー..の開発者といえば分かる人もいるのではないでしょうか.とは文章構造を記述するタイプのワープロソフトで,Microsoft Wordなど他のソフトウェアとは比べものにならないほど,数式入りの文章を綺麗に出力できます3数式入りの論文や国際会議の予稿をWordで求めてくる学会は滅びれば良い..実はこのサイトもの亜種のお世話になっております.
他にも,様々なアルゴリズムについてまとめた”The Art of Computer Programming” の著者として知られています.”The Art of Computer Programming” は現在も執筆途中であり,現在4巻まで出版されています.1巻にはこの本の読み方というフローチャートが付いており,そのフローチャートに従うと,本書を読むか睡眠をとることしかできない生活になってしまいます.また,本文の冒頭は,algorithm(アルゴリズム)とlogarithm(対数)がアナグラムの関係になっていることへの言及から始まるなど,ユーモアあふれる人物です.
一方で,その研究姿勢は徹底的で,に関する論文では,美しく読みやすい文章について議論するにあたり,ヒエログリフにまで遡っていたり,”The Art of Computer Programming” の冒頭では,algorithmの語源について徹底的に調査していたりと,象徴的なエピソードが数多くあります.
閑話休題4この記事は連想したものを順に書いているだけなので,本題に戻るとはどういうことなのでしょうか?.
クヌースの矢印記号を使った表記では,をと表します.をこの表記で書くと,です.よく見ると3との繰り返しなので,これも省略して書きます.は,3を8個で繋いでいるので,と書きます.同じ演算の繰り返しをで表してしまおうというわけです.
さて,気づくととても大きな数を扱っていましたが,この程度は序の口です.世の中には更なる巨大な数を求めた人々がいます.こうした巨大な数のことを巨大数といいます.
巨大数の先駆けのお話(グラハム数5このグラハムはエルデシュのお友達のグラハム)など興味深いエピソードもたくさんありますので,ここから先は詳しい方の著述を読むのがよろしいでしょう.
巨大数について気軽に知りたい方は,小林銅蟲先生の『寿司 虚空編』がおすすめです.
pixivコミックで読むこともできます.
https://comic.pixiv.net/works/1505
ふぃっしゅ氏の著書もオススメです.無料で読むことができます.
https://www.amazon.co.jp/巨大数入門-フィッシュ-ebook/dp/B01N4KCIJQ
それでは,良い巨大数ライフを!
演習
結局この記事はなんだったのか,200字程度で答えなさい.