√nが無理数であることの証明
(は平方数でない正の整数)が無理数であることはご存知かと思います.無理数であることの証明方法は色々ありますが,この記事では3通りの証明方法を紹介したいと思います.
証明方法1
1つ目の証明方法は,最も有名な背理法を直接使う方法です.
背理法について簡単に説明しますと,命題Aが成り立つ(真である)ことを証明するために,命題Aが成り立たない(偽である)と仮定し,その仮定だと矛盾が生じることを示すことで,命題Aが成り立つ(真である)ことを証明する手法です.
この方法での証明を想定した問題では,やが無理数であることを証明することが多いので,ここではが無理数であることを証明したいと思います.原理はやの証明と同様です.
証明.
が有理数であると仮定すると1実数の定義も碌にできていないのに,「無理数でない」=「有理数である」と言ってしまうのは,なかなか暴力的ではありますが,高校数学ですから気にしてはいけません.,
と表される.
両辺は正なので,両辺を2乗しても等号は成り立つ.
両辺を2乗して,
2乗して5の倍数となるのは,5の倍数だけなので2
,
と表せる正の整数が存在する.
をに代入して,
も5の倍数となり,ともに5の倍数であることが,互いに素であることと矛盾する.
よっては無理数である.
ちなみに,は互いに素という条件を付けない場合でも,正の整数には最小値1が存在することを利用して矛盾させる方法,無限降下法3Wikipediaに良い例があるので,知らない方はこちらを参照して下さい.によって証明を行うことができます.
証明方法2
2次方程式を利用して証明します.まずは,以下の証明をします.
問題文は赤チャートの例題を引用させていただきます4自分で問題文を考えるのメンドークサイ..
整数を係数とする2次方程式が有理数の解をもつならば,は整数であることを証明せよ.
チャート研究所『改訂版チャート式数学Ⅰ+A』赤チャート 平成29年 第6刷 例題62(1)
証明.
とする.
が整数であることを示すためには,となることを示せばよい.
にを代入して,
ここでと仮定すると,
がなんらかの素数の倍数であることになる.
つまり,と表すことができる.
に代入して,
よって,mもpの倍数となるため5中学数学の内容を覚えていないのですが,「整数の2乗が素数の倍数になるなら,もの倍数である」ことは証明済みでしょうか?証明済みでないなら,証明してみましょう.,が互いに素であることに矛盾する.
よってであり,は整数である.
さて,こうして証明した内容を使ってが無理数であることを証明します.
例として,が無理数であることを証明します.
証明.
前述の方程式に関してのとき,つまり,について考える.
解のひとつがだが,より,は整数ではないため,は無理数である.
同様に,任意のに関して,の解のひとつがであることと,となる整数を示すことで,は無理数であることが証明される.
証明方法3
素因数分解の一意性を利用して証明することもできます.
証明.
が有理数であると仮定すると,
と表される.
両辺は正なので,両辺を2乗しても等号は成り立つ.
両辺を2乗して,
ここで,の素因数分解を,の素因数分解をとすると,
となり,
左辺の素因数5の数は偶数個,右辺の素因数5の数は奇数個となるため素因数分解の一意性に反する.
よって,は無理数である.