√nが無理数であることの証明

\sqrt{n}nは平方数でない正の整数)が無理数であることはご存知かと思います.無理数であることの証明方法は色々ありますが,この記事では3通りの証明方法を紹介したいと思います.

証明方法1

1つ目の証明方法は,最も有名な背理法を直接使う方法です.

背理法について簡単に説明しますと,命題Aが成り立つ(真である)ことを証明するために,命題Aが成り立たない(偽である)と仮定し,その仮定だと矛盾が生じることを示すことで,命題Aが成り立つ(真である)ことを証明する手法です.

この方法での証明を想定した問題では,\sqrt{2}\sqrt{3}が無理数であることを証明することが多いので,ここでは\sqrt{5}が無理数であることを証明したいと思います.原理は\sqrt{2}\sqrt{3}の証明と同様です.

証明.
\sqrt{5}が有理数であると仮定すると1実数の定義も碌にできていないのに,「無理数でない」=「有理数である」と言ってしまうのは,なかなか暴力的ではありますが,高校数学ですから気にしてはいけません.
\sqrt{5} = \frac{m}{n} (m,nは互いに素である正の整数)
と表される.
両辺は正なので,両辺を2乗しても等号は成り立つ.
両辺を2乗して,
5 = \frac{m^2}{n^2}
m^2 = 5n^2
2乗して5の倍数となるのは,5の倍数だけなので2(5k)^2 = 25k^2 = 5 \cdot 5k^2
(5k+1)^2 = 25k^2 +10k + 1= 5(5k^2 + 2k) + 1
(5k+2)^2 = 25k^2 +20k + 4= 5(5k^2 + 4k) + 4
(5k+3)^2 = 25k^2 +30k + 9= 5(5k^2 + 6k + 1) + 4
(5k+4)^2 = 25k^2 +40k + 16= 5(5k^2 + 8k + 3) + 1

m=5kと表せる正の整数kが存在する.
m=5km^2 = 5n^2 に代入して,
(5k)^2 = 5n^2
25k^2 = 5n^2
n^2 = 5k^2
nも5の倍数となり,m,nともに5の倍数であることが,互いに素であることと矛盾する.
よって\sqrt{5}は無理数である.

ちなみに,m,nは互いに素という条件を付けない場合でも,正の整数には最小値1が存在することを利用して矛盾させる方法,無限降下法3Wikipediaに良い例があるので,知らない方はこちらを参照して下さい.によって証明を行うことができます.

証明方法2

2次方程式を利用して証明します.まずは,以下の証明をします.
問題文は赤チャートの例題を引用させていただきます4自分で問題文を考えるのメンドークサイ.

整数a,bを係数とする2次方程式x^2+ax+b=0が有理数の解rをもつならば,rは整数であることを証明せよ.

チャート研究所『改訂版チャート式数学Ⅰ+A』赤チャート 平成29年 第6刷 例題62(1)

証明.
r= \frac{m}{n} (m,nは互いに素,a \neq 0)とする.
rが整数であることを示すためには,n=\pm{1}となることを示せばよい.
x \frac{m}{n}を代入して,
\frac{m^2}{n^2} + a \frac{m}{n} + b = 0
m^2 + amn + bn^2 = 0
m^2 = -n( am + bn)

ここで n \neq \pm{1}と仮定すると,
nがなんらかの素数pの倍数であることになる.
つまり,n = pk (kは0以外の整数)と表すことができる.
m^2 = -n( am + bn)に代入して,
m^2 = -pk( am + bpk)
よって,mもpの倍数となるため5中学数学の内容を覚えていないのですが,「整数nの2乗が素数pの倍数になるなら,npの倍数である」ことは証明済みでしょうか?証明済みでないなら,証明してみましょう. m, nが互いに素であることに矛盾する.
よって n = \pm{1}であり,rは整数である.

さて,こうして証明した内容を使って\sqrt{n} (nは平方数でない正の整数)が無理数であることを証明します.
例として,\sqrt{5}が無理数であることを証明します.

証明.
前述の方程式に関してa=0, b=-5のとき,つまり,x^2 -5=0について考える.
解のひとつが\sqrt{5}だが,2 < \sqrt{5} < 3より,\sqrt{5}は整数ではないため,\sqrt{5}は無理数である.

同様に,任意の\sqrt{n} (nは平方数でない正の整数)に関して,x^2 -n=0の解のひとつが\sqrt{n}であることと,m < \sqrt{n} < m+1となる整数mを示すことで,\sqrt{n}は無理数であることが証明される.

証明方法3

素因数分解の一意性を利用して証明することもできます.

証明.
\sqrt{5}が有理数であると仮定すると,
\sqrt{5} = \frac{m}{n}
と表される.
両辺は正なので,両辺を2乗しても等号は成り立つ.
両辺を2乗して,
5 = \frac{m^2}{n^2}
m^2 = 5n^2
ここで,mの素因数分解をm=p_{1} \cdot p_{2} \cdot \cdots \cdot p_{i}nの素因数分解をn = q_{1} \cdot q_{2} \cdot \cdots \cdot q_{i}とすると,
m^2 = p_{1}^{2} \cdot p_{2}^{2} \cdot \cdots \cdot p_{i}^{2}
5n^2 = 5 \cdot q_{1}^{2} \cdot q_{2}^{2} \cdot \cdots \cdot q_{i}^{2}となり,
左辺の素因数5の数は偶数個,右辺の素因数5の数は奇数個となるため素因数分解の一意性に反する.
よって,\sqrt{5}は無理数である.

 

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