y=xに関する対称移動を考える

2次関数の問題には,グラフの軸に関して対称移動させるものや,原点に関して対称移動させるものがありました.
簡単におさらいしておきますと,関数y=f(x)x軸に関して対称移動させると,-y=f(x)y軸に関して対称移動させると,y=f(-x),原点に関して点対称なグラフにすると-y=f(-x)となります.

では,直線y=xに関して対称移動させると,関数はどのように変化するでしょうか.

 

y=x^2を対称移動させる(代表点を移動させる)

平面上の線対称移動とは,元の点と線対称となるように点を移動させることです.線対称となる2つの点を結ぶと対称の軸と垂直に交わり,また,それぞれの点と直線との距離が等しくなります.

それではy=x^2を直線y=xに関して対称移動させてみます.

まずは,y=x^2上の代表的な点がどこに移動するかを調べてみましょう.

y=x^2の点\cdots (-2,4)(-1,1)(0,0)(1,1)(2,4)\cdots
y=xに関して対称移動した点\cdots (4,-2)(1,-1)(0,0)(1,1)(4,2)\cdots

プロットすると以下の図のようになります.

おおよその形が見えてきました.

y=x^2を対称移動させる(紙を使って移動させる)

線対称移動は軸で折り返すイメージです.

正方形の紙を使って,y=x^2を直線y=xに関して対称移動させてみます.正方形の紙を用意して実際に動かしてみましょう.薄い紙がオススメです.頭の中でイメージするのもアリです.

まずは,正方形の紙のちょうど真ん中が原点となるように軸を描き,その上に2次関数y=x^2のグラフを描きます.

直線y=xに沿って折ります.グラフを描いた面が内側になるように折りましょう.そうすると,直角二等辺三角形ができ,下の図のように,裏側のグラフが透けて見えると思います.

最後に,グラフを描いた面が裏側になるように開きましょう.

上の図のようなグラフが透けて見えるはずです.

点を対称移動させる(一般化する)

どうやらy=x^2を直線y=xに関して対称移動させると,x=y^2になるようです.

一般化するために,点(a,b)を直線y=xに関して対称移動させるとどうなるか,調べてみたいと思います1数学Ⅱの知識を使ったり使わなかったりしているので,少し読みにくいかもしれません.

初めに,点(a,b)を通り,直線y=xと垂直に交わる直線を考えてみましょう
直線y=xと垂直に交わることから,求める直線の傾きは直線-1なので,2(a, b)を通り,傾きがmの直線は方程式
y-b = m(x-a)
で表されます.
(証明)
傾きがmの直線の方程式はy=mx+\alpha
そこにx=ay=bを代入して,
b = ma + \alpha
\alpha = b - ma
\alphaをもとの式に代入して,
y = mx + b - ma
y-b = m(x-a)

\begin{aligned}
y-b &= -1(x-a) \\
y &= -x +a + b 
\end{aligned}

求めたい直線がy=-x+a+bであることが分かりました.
次に,2つの直線の交点を求めます.y=xy=-x+a+bの連立方程式を解くと,交点が\left( \frac{a+b}{2}, \frac{a+b}{2} \right)だと分かります.

最後に対称移動した後の座標を求めましょう.
a<bのとき,元の点のx座標と対称移動した点のx座標の差が,2\left( \frac{a+b}{2} - a \right)であることが分かります.ここから,対称移動後の点のx座標は,

\begin{aligned}
a + 2\left( \frac{a+b}{2}-a \right) &= a+a+b-2a \\
&= b 
\end{aligned}

x座標はbであることが分かりました.
同様に考えると,y座標がaであることが求まります.

a>bのとき,移動前と移動後の点のx座標の差が,2\left( a - \frac{a+b}{2} \right)であり,移動後の点のx座標がa - 2\left( a - \frac{a+b}{2} \right)=bであることが分かります.同様に,y座標はaとなります.

a=bの場合は,点(a,b)も点(b,a)も同じです.

これらの結果をまとめると,点(a,b)を直線y=xに関して対称移動すると,点(b,a)となることが分かります.

直線y=xに関して対称移動させるとyxが入れ替わってしまうようです.
確かに,前の節で触れた2次関数y=x^2を対称移動させた式も,x=y^2となっていました.

遊びの提案(演習問題)

直線y=2xに関する対称移動について考えてみましょう.

別の考え方と大学の数学

今回は素朴な手法や,地道な計算によって,対称移動について調べました.これらもとても大事な手法ですが,全く異なる考え方を思いついた人もいるでしょう.その一例を紹介します.

線対称の軸y=xは45°傾いています.そこで,y=xに関する対称移動を,
1.原点を中心に平面ごと左に45°回転させる(座標は回転させずにそのまま固定).

2.y軸に対して線対称移動をする.

3.平面を右に45°回転させる.
といった操作だと考えることができます.

大学で行列を学ぶと,この考え方を簡単に表現することができます3行列による合同変換です.左の行列から順に操作3,操作2,操作1を表しています.
\begin{pmatrix} \cos -45^{\circ} & - \sin -45^{\circ} \\ \sin -45^{\circ} & \cos -45^{\circ} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \cos 45^{\circ} & - \sin 45^{\circ} \\ \sin 45^{\circ} & \cos 45^{\circ} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix}

これから大学生になる読者の皆さんは,お楽しみに!

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