[日記]ある整数の問題を解く過程

私は初等幾何の問題と整数の問題には不慣れですが,ある問題が淀みなく解けたもので,その解答を書くまでの過程を記録しておこうと思った次第です.簡単な問題を解いているときの思考を,寄り道や回り道も含めて書き出すというのは,あまり無かったものかと思います.他の人がどのように数学に取り組み,どのように考えているのか,知りたい人が居ればお役に立てるかもしれません.

問題は赤チャート数学Aの例題121です.

 \sqrt{n^2 + 144}が自然数となるような自然数nをすべて求めよ。

チャート研究所編著『改訂版チャート式®︎数学Ⅰ+A』赤チャート 数学A 例題121

この問題を見た直後からの思考の流れを記述していきます.

2つ前置きをしておきます.
私は自然数に0を含める人です1そうでないと整数の構成のときに困りませんか?2項演算子「+」に関する単位元すら存在しないなんて.
また、私はある程度考えがまとまるまでペン(鉛筆)を手に取りません.理由は色々ありますが,いくつか挙げるならば,頭で考えていることに手が全く追いつかないこと,答案は淀みなく書き切るを良しとしていることが主な理由となります.

それでは,この問題を解いたときの思考を追っていきましょう.

 

まず,例が頭に浮かびます.n = 0, 5, 9のときに条件を満たすことが,ただちに分かります.
(ピタゴラスの定理でよく出てくる例なので,n = 5, 9がただちに分かることに異論はないと思います)

次に,問題文の「すべて求めよ」に注目します.
すべてを求められると言うことは,探索すべき範囲を制限できる,つまり,条件を満たすか確認するべきnは限られている,ということが分かります.
この考えに至ってから,ただちに思いついた例は,かなり大雑把ですが,101^2 -100^2 = 201 > 144より,「n100より小さい」というものです.

(ここまで約1分)

探索範囲はもっと狭いはずなので,とりあえず文字でおいて,操作してみましょう.
m = \sqrt{n^2 + 144}とおきます.
両辺が正なので,両辺を2乗しても等号は成り立ちます.よって,
m^2 = n^2 + 12^2
(なんとなく14412^2にして考えています)
\begin{aligned} m^2 - n^2 &= 12^2 \\ (m+n)(m-n) &= 12^2 \end{aligned}
mnは自然数なので,
(m+n) \geqq (m-n)
さらに,
a = b \times cのとき,b \geqq cとすると,b \geqq \sqrt{a}c \leqq \sqrt{a}が成り立ちますから,
(m-n) \leqq 12
さらに,(m+n)(m-n) = 12^2の右辺は偶数なので,(m+n)(m-n)は共に偶数であることが分かります.
ついでにm \geqq nです.
ここまで,候補を絞ることができれば,あとは(m+n)(m-n) = 144 = 2^4 \cdot 3^2を利用したシラミつぶしで良いでしょう.

(ここでようやくペンを取りました)

答案.
m = \sqrt{n^2 + 144}とおく.
両辺を2乗して,
\begin{aligned} m^2 - n^2 &= 12^2 \\ (m+n)(m-n) &= 12^2 \\ (m+n)(m-n) &= 2^4 \cdot 3^2 \end{aligned}
右辺が偶数より,(m+n)(m-n)は共に偶数である.
また,mnは自然数なので,(m+n) \geqq (m-n)より,(m-n) \leqq 12
これらの条件を満たす(m+n)(m-n)は,

\begin{cases} m+n = 12 \\ m-n = 12 \end{cases}

\begin{cases} m+n = 18 \\ m-n = 8 \end{cases}

\begin{cases} m+n = 24 \\ m-n = 6 \end{cases}

\begin{cases} m+n = 36 \\ m-n = 4 \end{cases}

\begin{cases} m+n = 72 \\ m-n = 2 \end{cases}

それぞれを解いて求まるnは,n = 0, 5, 9, 16, 35 である.

  

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